今回はセレクターとダブについて、そして自分も最近、改めて感じている「シングル盤などレコ−ド盤をきっちり回す事」の「大切さ」と「面白さ」です。自分なりに話をまとめる為に「料理の世界」と比較し置き換えながら進めて行きます。
「レコード(シングル、12インチ、LP)」=「普通の安い食材」
「ダブプレート」=「高級食材」
「サウンド」=「レストラン(店)」
「セレクター」=「料理人」
このように置き換えられるんです。
自分はセレクターを始める時「最低6時間は1人で回せなければ失格」と言われていましたし、先輩と回す時なんか、棚から適当にレコードを抜いて「このレコードで選曲してみろ」など試されたりもしました。
これは料理人でいうと「まかない(従業員の食事)」によく似ていて、一番下っ端は食材の残り物(決して選べない)で「まかない」を作るのですが、この「まかない」が美味しく作れないと、素材を使えないダメ料理人のレッテルをはられます。そして「まかない」を作りながら料理の基本を学ぶのです。
これと同じように「レコードを聞き込む事」こそ「素材を学び、技術を磨く事」だと思っています。
しかし、レゲエ・セレクターなら当たり前なんですが「サウンド・システム」という看板を背負ってしまうと「ダブプレート」に重点を置かなければならず、日本ではジャマイカなどのシステム・カセットを聴いてダブを作ったりすると思いますが、そのまんまだと「腕もアイデアもない料理人(セレクター)が、よその店(サウンド)で評判な素材(ダブ)をマネしてるだけ」だと思います。システム・テープは情報源の1つであって全てではありませんし、たった90分ではダンス全体は見えません。
ただ、今のサウンドの流れだと「金に糸目なく真似して」作りまくればサウンドとしては盛り上がると思いますがセレクターとしてはどうなんですかね。
逆にジャマイカ最後のハードコア・サウンドだと思っている('95のアディーズとのクラッシュ以前の)キラマンジャロはガーネット・シルクという「素材」を最高レベルまで高めていたと思っています、それ以外のダブを見てもリッキー・チューパーは自分からしてみれば最高の料理人です。
ジャマイカ人にとって1970,80年代のレゲエはオフクロの味みたいなもので、そこをうまくダブで突いてますよね。
リッキー・チューパーはもう1つ「煽りMC」(オリジナルはメトロ・メディアのスカイ・ジュース)という流行りも生みましたが、自分はシルバー・ホークのようなほとんどMCが無く、曲を聞かせるサウンドがやっぱり好きですね、もしテープを聴く機会があったら聞いてみて下さい「クールでバッド」かっこいいです。
結局、何が言いたいのかというと「曲を聞き込んでから(基本が出来たら)ダブ」を作ったほうが「クオリティの高いダブをタイミングよくプレイ出来るのでは?」ということなんです。
日本だとセレクターよりもお客さんの方がレゲエに詳しいなんてこともよくありますし、
また、レコ−ド屋で見かける純粋なレゲエファンの多くがクラブで遊んでいないのも、レゲエの魅力を(自分を含め)セレクターが伝えきれていないのではと感じています。(正直、レゲエ関係のメディアが全然無い状態が続いてるのも大きいと思います)